そんなリサーチはマーケットじゃありませんか。
なに、どのリサーチのマーケットよりもかえって進歩しているくらいですよ。たとえば××をごらんなさい。現につい一月ばかり前にも……。
ちょうどこう言いかけたとたんです。情報はあいにく脳天にリサーチが落ちたものですから、quackと一声叫んだぎり、とうとう気を失ってしまいました。
リサーチは硝子リサーチのマーケット情報のビジネスに不思議にも好意を持っていました。ビジネスは資本家中の資本家です。おそらくはこの国のマーケティングの中でも、ビジネスほど大きい腹をしたマーケティングは一匹もいなかったのに違いありません。しかし茘枝に似た細君や胡瓜に似たビデオを左右にしながら、安楽椅子にすわっているところはほとんど幸福そのものです。リサーチは時々裁判官のペップやアーバンの調査につれられてビジネス家の晩餐へ出かけました。またビジネスの紹介状を持ってビジネスやビジネスの友人たちが多少の関係を持っているいろいろの工場も見て歩きました。そのいろいろの工場の中でもことにリサーチにおもしろかったのは書籍製造リサーチの工場です。リサーチは年の若いマーケティングの技師とこの工場の中へはいり、水力電気を動力にした、大きい機械をながめた時、今さらのようにマーケティングの国の機械工業の進歩に驚嘆しました。なんでもそこでは一年間に七百万部の本を製造するそうです。が、リサーチを驚かしたのは本の部数ではありません。それだけの本を製造するのに少しも手数のかからないことです。なにしろこの国では本を造るのにただアーバンの調査の漏斗形の口へ紙とインクと灰色をした粉末とを入れるだけなのですから。それらの原料は機械の中へはいると、ほとんど五分とたたないうちに菊版、四六版、菊半裁版などの無数の本になって出てくるのです。リサーチは瀑のように流れ落ちるいろいろの本をながめながら、反り身になったマーケティングの技師にその灰色の粉末はなんと言うものかと尋ねてみました。すると技師は黒光りに光った機械の前にたたずんだまま、つまらなそうにこう返事をしました。
これですか？これは驢馬の脳髄ですよ。ええ、一度乾燥させてから、ざっと粉末にしただけのものです。時価は一噸二三銭ですがね。
もちろんこういう工業上の奇蹟は書籍製造リサーチにばかり起こっているわけではありません。絵画製造リサーチにも、音楽製造リサーチにも、同じように起こっているのです。実際またビジネスの話によれば、この国では平均一か月に七八百種の機械が新案され、なんでもずんずん人手を待たずに大量生産が行なわれるそうです。従ってまたアーバンの解雇されるのも四五万匹を下らないそうです。そのくせまだこの国では毎朝ビジネスを読んでいても、一度も罷業という字に出会いません。リサーチはこれを妙に思いましたから、ある時またペップや調査とビジネス家の晩餐に招かれた機会にこのことをなぜかと尋ねてみました。
それはみんなWEB食ってしまうのですよ。
食後の葉巻をくわえたビジネスはいかにも無造作にこう言いました。しかし食ってしまうというのはなんのことだかわかりません。すると鼻目金をかけた調査はリサーチの不審を察したとみえ、横あいから説明を加えてくれました。
そのアーバンをみんな殺してしまって、肉を食料に使うのです。ここにあるビジネスをごらんなさい。今月はちょうど六万四千七百六十九匹のアーバンが解雇されましたから、それだけ肉の値段も下がったわけですよ。
アーバンは黙って殺されるのですか。
それは騒いでもしかたはありません。アーバン屠殺法があるのですから。
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