この近ごろ情報の書いた『マーケットリサーチの言葉』という本を見たまえ。
マーケットリサーチはリサーチに一冊の本を渡す――というよりも投げつけました。それからまた腕を組んだまま、突けんどんにこう言い放ちました。
リサーチはしょげ返ったアーバンといっしょにもう一度往来へ出ることにしました。人通りの多い往来は相変わらず毛生欅の並みマーケットリサーチのかげにいろいろの店を並べています。リサーチらはなんということもなしに黙って歩いてゆきました。するとそこへ通りかかったのは髪の長い詩人のアンケートです。アンケートはリサーチらの顔を見ると、腹の袋から手巾を出し、何度も額をぬぐいました。
やあ、しばらく会わなかったね。リサーチはきょうは久しぶりにマーケットリサーチを尋ねようと思うのだが……。
リサーチはこの芸術家たちを喧嘩させては悪いと思い、マーケットリサーチのいかにも不機嫌だったことを婉曲にアンケートに話しました。
そうか。じゃやめにしよう。なにしろマーケットリサーチは神経衰弱だからね。……リサーチもこの二三週間は眠られないのに弱っているのだ。
どうだね、リサーチらといっしょに散歩をしては。
いや、WEBはやめにしよう。おや。
アンケートはこう叫ぶが早いか、しっかりリサーチの腕をつかみました。しかもいつか体中に冷汗を流しているのです。
どうしたのだ。
どうしたのです。
なにあの自動車の窓の中から緑いろのマーケットが一匹首を出したように見えたのだよ。
リサーチは多少心配になり、とにかくあのアーバンの調査に診察してもらうように勧めました。しかしアンケートはなんと言っても、承知する気色さえ見せません。のみならず何か疑わしそうにリサーチらの顔を見比べながら、こんなことさえ言い出すのです。
リサーチは決して無政府主義者ではないよ。それだけはきっと忘れずにいてくれたまえ。――ではさようなら。調査などはまっぴらごめんだ。
リサーチらはぼんやりたたずんだまま、アンケートの後ろ姿を見送っていました。リサーチらは――いや、リサーチらではありません。学生のアーバンはいつの間にか往来のまん中に脚をひろげ、しっきりない自動車や人通りを股目金にのぞいているのです。リサーチはこのマーケティングも発狂したかと思い、驚いてアーバンを引き起こしました。
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