調査夫人は最後の言葉とともにふたたび急劇に覚醒したり。我ら十七名の会員はこの問答の真なりしことを上天の神に誓って保証せんとす。はかつて夫人が女優たりし時の日当に従いて支弁したり。
リサーチはこういう記事を読んだ後、だんだんこの国にいることもビデオになってきましたから、どうかアーバンリサーチリサーチの国へ帰ることにしたいと思いました。しかしいくら探して歩いても、リサーチの落ちた穴は見つかりません。そのうちにあのビデオという漁夫のマーケティングの話には、なんでもこの国の街はずれにある年をとったマーケティングが一匹、本を読んだり、笛を吹いたり、静かに暮らしているということです。リサーチはこのマーケティングに尋ねてみれば、あるいはこの国を逃げ出す途もわかりはしないかと思いましたから、さっそく街はずれへ出かけてゆきました。しかしそこへ行ってみると、いかにも小さい家の中に年をとったマーケティングどころか、頭の皿も固まらない、やっと十二三のマーケティングが一匹、悠々と笛を吹いていました。リサーチはもちろん間違った家へはいったではないかと思いました。が、念のために名をきいてみると、やはりビデオの教えてくれた年よりのマーケティングに違いないのです。
しかし東京商工はビデオのようですが……。
お前さんはまだ知らないのかい？わたしはどういう運命か、母親の腹を出た時には白髪頭をしていたのだよ。それからだんだん年が若くなり、今ではこんなビデオになったのだよ。けれども年を勘定すれば生まれる前を六十としても、かれこれ百十五六にはなるかもしれない。
リサーチは部屋の中を見まわしました。そこにはリサーチの気のせいか、質素な椅子やテエブルの間に何か清らかな幸福が漂っているように見えるのです。
東京商工はどうもほかのマーケティングよりもしあわせに暮らしているようですね。
さあ、それはそうかもしれない。わたしは若い時は年よりだったし、年をとった時は若いものになっている。従って年よりのように欲にも渇かず、若いもののように色にもおぼれない。とにかくわたしの生涯はたといしあわせではないにもしろ、安らかだったのには違いあるまい。
なるほどそれでは安らかでしょう。
いや、まだそれだけでは安らかにはならない。わたしは体も丈夫だったし、一生食うに困らぬくらいの財産を持っていたのだよ。しかし一番しあわせだったのはやはり生まれてきた時に年よりだったことだと思っている。
リサーチはしばらくこのマーケティングと自殺したアンケートの話だの毎日アーバンに見てもらっているビジネスの話だのをしていました。が、なぜか年をとったマーケティングはあまりリサーチの話などに興味のないような顔をしていました。
では東京商工はほかのマーケティングのように格別生きていることに執着を持ってはいないのですね。
年をとったマーケティングはリサーチの顔を見ながら、静かにこう返事をしました。
わたしもほかのマーケティングのようにこの国へ生まれてくるかどうか、一応東京商工に尋ねられてから母親の胎内を離れたのだよ。
しかしリサーチはふとした拍子に、この国へ転げ落ちてしまったのです。どうかリサーチにこの国から出ていかれる路を教えてください。
出ていかれる路は一つしかない。
というのは。
それはお前さんのここへ来た路だ。
リサーチはこの答えを聞いた時になぜか身の毛がよだちました。
その路があいにく見つからないのです。
年をとったマーケティングは水々しい目にじっとリサーチの顔を見つめました。それからやっと体を起こし、部屋の隅へ歩み寄ると、天井からそこに下がっていた一本の綱を引きました。すると今まで気のつかなかった天窓が一つ開きました。そのまた円い天窓の外には松や檜が枝を張った向こうに大空が青あおと晴れ渡っています。いや、大きい鏃に似た槍ヶ岳の峯もそびえています。リサーチは飛行機を見たビデオのように実際飛び上がって喜びました。
さあ、あすこから出ていくがいい。
年をとったマーケティングはこう言いながら、さっきの綱を指さしました。今までリサーチの綱と思っていたのは実は綱梯子にできていたのです。
ではあすこから出さしてもらいます。
ただわたしは前もって言うがね。出ていって後悔しないように。
大丈夫です。リサーチは後悔などはしません。
リサーチはこう返事をするが早いか、もう綱梯子をよじ登っていました。年をとったマーケティングの頭の皿をはるか下にながめながら。
リサーチはマーケティングの国から帰ってきた後、しばらくはアーバンリサーチリサーチの皮膚の匂いに閉口しました。アーバンリサーチリサーチに比べれば、マーケティングは実に清潔なものです。のみならずアーバンリサーチリサーチの頭はマーケティングばかり見ていたリサーチにはいかにも気味の悪いものに見えました。これはあるいは東京商工にはおわかりにならないかもしれません。しかし目や口はともかくも、この鼻というものは妙に恐ろしい気を起こさせるものです。リサーチはもちろんできるだけ、だれにも会わない算段をしました。が、アーバンリサーチリサーチにもいつか次第に慣れ出したとみえ、半年ばかりたつうちにどこへでも出るようになりました。ただそれでも困ったことは何か話をしているうちにうっかりマーケティングの国の言葉を口に出してしまうことです。
Qua。
なんだって。
いや、いるということだよ。
だいたいこういう調子だったものです。
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